[借金返済 債務整理] 請求出来なかった求償権は所得から控除できるか?

原告
エルソルプロダクツ
当たり

○主文

一本件訴えのうち、被告が昭和五七年一二月二五日付けでした原告の昭和五五年分所得税の更正中の納付すべき税額が二三三九万九九〇〇円を超えない部分の取消しを求める部分を却下する。
二原告のその余の請求を棄却する。
三訴訟費用は原告の負担とする。

○事実

第一当事者の求めた裁判

一請求の趣旨
1原告の昭和五五年分所得税について、被告が昭和五七年一二月二五日付けでした更正のうち納付すべき税額一二万六三〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定並びに昭和五八年一月三一日付けでした過少申告加算税賦課決定を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
二請求の趣旨に対する答弁
主文同旨

第二当事者の主張

一請求原因
1原告の昭和五五年分所得税についての申告、更正、賦課決定及び不服申立ての経緯は、別表記載のとおりである。
2しかし、別表記載の修正申告(以下「本件修正申告」という)は、後述のとおり錯誤に基づくもので無効であるところ、同表記載の昭和五七年一二月二五日付けの更正(以下「本件更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「第一次決定」という。)並びに昭和五八年一月三一日付け過少申告加算税賦課決定(以下、「第二次決定」という。)は、いずれも本件修正申告を前提とするものであるから違法である。
よつて、原告は、本件更正のうち納付すべき税額一二万六三〇〇円を超える部分及び第一次決定並びに第二次決定の取消しを求める。
二本案前の被告の主張
1所得税の納税義務は申告により確定するのを原則とし、納税義務者において申告に係る納付すべき税額が過大であるとしてその過誤を是正するためには、申告に錯誤があつてしかもそれが客観的に明白かつ重大であり、更正の請求以外の方法による是正を許さないとすれば納税者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がない限り、更正の請求の方法によることが必要であり(国税通則法二三条)、更正の請求をしないで申告額を超えない部分についてまで取消しを請求することを不適法である(最高裁昭和三九年一〇月二二日第一小法廷判決・民集一八巻八号一七六二頁)ところ、本件修正申告はそもそも更正の請求の期間経過後にされたもので更正の請求の余地はなかつたのであるが、法定申告期限よりかなり後にされていることからすると、熟慮の上されたことが予測される。
2原告は、本件修正申告は錯誤により無効であると主張しているが、本件修正申告には錯誤はなく、仮にあつたとしても後述(八の1)のとおり右1の特段の事情があるとはいえない。
3したがつて、本件訴えのうち、本件更正中の納付すべき税額が本件修正申告における申告額である二三三九万九九〇〇円を超えない部分の取消しを求める部分は、不適法であるから却下されるべきである。
三本案前の被告の主張に対する原告の認否及び反論
1本案前の被告の主張1は認め、同2、3は争う。
2本件修正申告が錯誤に基づくものであり、しかもそれが客観的に明白かつ重大であつて更正の請求以外の方法による是正を許さないとすれば原告の利益が著しく害される特段の事情があることは、後述(七の1の(四))のとおりである。
四請求原因に対する認否
l請求原因1の事実は認める。
2同2は争う。
五被告の主張
1原告の昭和五五年分所得税に係る所得金額及び納付すべき税額
(一)所得金額
(1)総所得金額
三六〇万七四一〇円
(2)分離課税の長期譲渡所得の金額一億
一五二六万四七五四円
右金額は、次のアの金額から、イの金額及び次の(3)の損失額並びに次のウの金額を控除した残額である。
ア総収入金額一億
二三一七万〇〇〇〇円
右金額は、原告が、昭和五五年六月二八日、所有の東京都東村山市<地名略>及び<地名略>の山林七三一平方メートル(以下「<地名略>の土地」という。)を鈴木商事株式会社に対し売り渡したこと(以下「本件譲渡」という。)による代金額である。
イ取得費
六一五万八五〇〇円
ウ特別控除額
一〇〇万〇〇〇〇円
(3)分離課税の短期譲渡所得(損失)の金額
△七四万六七四六円
(二)所得税額
(1)総所得金額に対する算出税額
三三万四八六〇円
右金額は、右(一)の(1)の総所得金額から所得控除額一〇七万九七一〇円を差し引いた課税総所得金額二五二万七〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨)について算出した税額である。
(2)分離課税の長期譲渡所得の金額に対する算出税額
三七三九万二六五〇円
(3)納付すべき税額
三七四一万五一〇〇円
右金額は、右(1)、(2)の合計金額から、源泉所得税額及び予定納税額の合計額三一万二四一〇円を差し引いた金額である。
2本件更正の適法性
以上のとおり、原告の昭和五五年分所得税の納付すべき税額は、本件更正と同額であるから、本件更正は適法である。
3第一次決定及び第二次決定の適法性
(一)第一次決定の適法性
原告の昭和五五年分所得税についての納付すべき税額は、右1に述べたとおり三七四一万五一〇〇円であるところ、原告は、本件修正申告においては計算を誤つて二三三九万九九〇〇円として申告したので、一四〇一万五〇〇〇円(国税通則法(昭和五九年法律第五号による改正前のもの。
以下同じ。)一一八条三項により一〇〇〇円未満切捨て。)を過少に申告したことになる。
第一次決定は、右の一四〇一万五〇〇〇円に一〇〇分の五を乗じて算出した七〇万〇七〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満切拾て。)を過少申告加算税として賦課決定したものであるから、適法である。
(二)第二次決定の適法性
原告は、確定申告においては納付すべき税額を一二万六三〇〇円として申告したので、本件修正申告における納付すべき税額二三三九万九九〇〇円との差額二三二七万三〇〇〇円(国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満切拾て。)を過少に申告したことになる。
第二次決定は、右の差額二三二七万三〇〇〇円に一〇〇分の五を乗じて算出した一一六万三六〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満切捨て。)を過少申告加算税として賦課決定したものであるから、適法である。
六被告の主張に対する認否
1被告の主張1について
(一)(所得金額)の(1)(総所得金額)は認める。
(2)(分離課税の長期譲渡所得の金額)のうち、アないしウは認めるが、被告主張の長期譲渡所得の計算及び金額は争う。
(3)(分離課税の短期譲渡所得(損失)の金額)は認める。
(二)(所得税額)の(1)(総所得金額に対する算出税額)は認め、(2)(分離課税の長期譲渡所得の金額に対する算出税額)、(3)(納付すべき税額)は争う。ただし、源泉所得税額及び予定納税額の合計額は認める。
2同2は争う。
3同3について
(一)(第一次決定の適法性)のうち、本件修正申告に被告主張の計算の誤りがあつたことは認め、その余は争う。
(二)(第二次決定の適法性)は争う。
七原告の反論
1保証債務を履行するための資産の譲渡の特例の適用
(一)原告は、昭和五二年三月二五日、有限会社海紅苑(以下「海紅苑」という。)から、静岡県伊東市<地名略>外六筆の山林合計七万〇七七一平方メートル(以下「<地名略>の土地」という。)を代金一億円で買い受けたが、当時、<地名略>の土地に、Aを実質的な債権者とし、海紅苑を債務者とする債権及び株式会社太陽神戸銀行(以下「太陽神戸銀行」という。)を債権者とし、海紅苑を債務者とする債権を担保するために、それぞれ担保権が設定されていたことから、原告は、同年四月一一日、Aとの間で、右各債権のうち一億円について、原告がその債務を保証する旨の、ないしは、原告が改めて<地名略>の土地を担保に供し、物上保証人となる旨の合意をした。
(二)原告は、右(一)の保証債務の履行として、あるいは物上保証人の弁済としてAに対して一億円を支払つたが、その資金を調達するために本件譲渡をした。
(三)右(一)の保証債務の履行又は物上保証人としての弁済により、原告は主債務者である海紅苑に対し一億円の求償権を取得したところ、海紅苑は資力がなく、原告は右求償権の全部を行使することができない。
(四)原告は、昭和五五年分所得税の申告に当たり、確定申告書に、本件譲渡に係る所得について所得税法六四条二項の所得計算の特例(以下「本件特例」という。)の適用を受ける旨その他所定の事項の記載をした。
なお、本件修正申告に係る修正申告書には本件特例の適用を受ける旨の記載はないが、本件修正申告は、原告の依頼を受けた富澤税理士が、原告の説明を理解せず、本件譲渡には本件特例の適用はない旨の被告職員の誤つた指導により、原告の意思に反して行つたものであるから、原告にとつて錯誤に基づくものであり、しかもそれが客観的に明白かつ重大であつて更正の請求以外の方法による是正を許さないとすれば原告の利益が著しく害される特段の事情があるというべきであるから、無効である。
(五)したがつて、右求償権の行使ができないこととなつた金額に対応する部分の金額はなかつたものとみなして、本件譲渡に係る長期譲渡所得の金額を計算すべきものである。
2本件特例の第三取得者への適用
仮に右1の(一)の保証ないし物上保証の合意の存在が認められないことにより、本件譲渡が保証債務を履行するためのものとは認められないとしても、原告は、<地名略>の土地の第三取得者として海紅苑の債務を弁済するために本件譲渡を行つたものであるところ、第三取得者も物上保証人に類以する立場にあるというべきであるから、本件譲渡には本件特例が適用されるべきである。
八原告の反論に対する認否
1原告の反論1の(一)のうち、原告が<地名略>の土地を買い受けたこと及び<地名略>の土地に担保権が設定されていたことは認め、その余は否認する。
(二)は否認する。
(三)のうち、海紅苑に資力がないことは認め、その余は争う。
(四)のうち、確定申告に係る申告書に主張の事項の記載があること、本件修正申告に係る修正申告書に主張の事項の記載がないことは認め、その余は争う。
なお、本件譲渡には本件特例の適用はないから、そもそも、原告に錯誤はない。
また、被告職員は、本件特例の適用を求める場合の要件を指導しただけであり、原告主張の特段の事情はない。(五)は争う。
2同2のうち、原告が物上保証に供されていた<地名略>の土地の第三取得者であることは認め、その余は争う。
九被告の反論
保証人が債務保証した際に、既に主たる債務者が資力を喪失しており、かつ保証人が債務者に資力がないことを知りながら、あえて債務保証をしたような場合には、保証人において、あらかじめ求償権行使による回収の期待を持たない点で、実質的には、当該保証人による債務者の債務引受か、あるいは、主たる債務者に対する利益供与又は贈与とみなし得るのであつて、かかる場合は、所得税法六四条二項にいう「求償権の行使が不能になつたとき」に該当せず、本件特例を適用する余地はないものと解するのが相当であるところ、海紅苑は、原告が保証人になつたと主張する昭和五二年四月一一日当時、既に債務の支払能力を喪失しており、原告もこれを知つていた。
一〇被告の反論に対する認否
争う。
昭和五二年四月一一日当時、海紅苑は同年秋には所有のホテルを売却して債務を返済できる見通しであつたのであり、原告もそう信じていた。
第三証拠(省略)

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○理由

一当事者間に争いがない事実
請求原因1(課税処分等の経緯)、被告の主張1の(一)(ただし、(2)の冒頭部分を除く。)、(二)の(1)の各事実並びに原告の昭和五五年分所得税の源泉所得税額及び予定納税額の合計額はいずれも当事者間に争いがない。
二本件特例の適用の有無について
1本件譲渡に至る経緯
右一の争いのない事実に、成立に争いがない甲第一号証ないし第七号証、第一二号証、乙第三号証、第五号証の一、第六号証、第二〇号証の一、第二四号証ないし第二七号証、原本の存在及び成立に争いがない乙第五号証の二、三、第一二号証の一ないし四、第一三号証の一、二、第一七号証、第一九号証の一ないし四、原告本人尋問の結果及びこれにより成立が認められる甲第八号証ないし第一〇号証、第一六号証、第三五号証の一、二、同尋問の結果により原本の存在及び成立が認められる甲第二七号証ないし第三一号証、弁論の全趣旨により成立が認められる甲第一三号証、第一八号証ないし第二一号証、第三三号証、第三四号証、第三七号証ないし第四〇号証、郵便官署作成部分については成立に争いがなく、その余の作成部分については弁論の全趣旨により成立が認められる甲第一四号証、第一五号証、弁論の全趣旨により原本の存在及び成立が認められる甲第一七号証、第三二号証を総合すれば、次の事実が認められる。
(一)原告は、昭和五〇年一二月九日、東村山市<地名略>の土地を小学校用地として東村山市土地開発公社へ代金一億六六五五万六三四二円で売り渡し、右譲渡に係る所得について、租税特別措置法三三条一項の規定(収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例)の適用を受けるため、Aの斡旋により、昭和五二年三月二五日、海紅苑から<地名略>の土地(登記簿上の所有者は宇宙倫理の道教団外一名)を代金一億三〇〇〇万円で買い受け、同日までに内金一億円を支払つた。
(二)原告は昭和四六、七年ころ、他に譲渡した土地の境界をめぐる紛争を通じてAと知り合い、その後も土木工事に関する紛争を解決してもらつたり、原告が営む園芸業に関しゴルフ場等の植栽工事の請負先を紹介してもらうなどし、海紅苑の代表者BともAの紹介によりかねて面識があつたもので、原告は、<地名略>の土地の売買のころまでAを全面的に信頼して、Aとの間で多額の金銭の授受があつても何も書面を作らないほどの関係にあり、<地名略>の土地の売買についても、当初はもつと条件のよい他の土地を斡旋されたのが後に一方的に<地名略>の土地に変更された経緯があつたが、これに対しても格別異議は述べず、売買契約締結に当たつて<地名略>の土地の登記簿謄本を見ることすらしなかつた。
(三)<地名略>の土地の売買契約においては、昭和五二年三月三一日までに、海紅苑において<地名略>の土地に設定されている担保権の登記の抹消手続をすることとされていたが、太陽神戸銀行を権利者とする極度額三〇〇〇万円の根抵当権設定登記及びCを権利者名義とする極度額合計八〇〇〇万円の根抵当権設定仮登記(いずれも債務者は海紅苑。
以下、右の各登記に係る担保権を「本件担保」という。)は期限までに抹消されなかつた。
しかし、原告は<地名略>の土地の売買契約を解除しても既に支払つた一億円の返還を受けられる見込みはなかつたことから、今更後へは引けず、同年八月末には海紅苑所有のホテルを売却できるので、その代金で本件担保に係る登記を抹消できるとのBの言を信用し、同年四月一〇日、海紅苑との間で同年八月三一日まで本件担保に係る登記の抹消を猶予することを合意した上、海紅苑の求めに応じて残代金三〇〇〇万円を支払つた。
なお、これより先の同年四月七日、<地名略>の土地につき宇宙倫理の道教団外一名から直接原告に対する所有権移転登記が経由された。
(四)海紅苑が進めていたその所有に係るホテルの売却の交渉は結局不成功に終わり、海紅苑は(三)の期限が来ても本件担保に係る登記の抹消手続きをすることができず、また抹消手続のできる見込みもなくなつたところ、Aは、昭和五二年九月ころから、原告に対し、太陽神戸銀行分として三〇〇〇万円、Aが実質的な権利者であるC名義分として七〇〇〇万円の合計一億円の海紅苑の債務を支払うよう求めるようになつたため、原告は、昭和五三年五月ころ、<地名略>の土地を売却して支払資金を作るべく、Aに対し<地名略>の土地の処分を任せる旨の委任状及び念書を交付した。
(五)昭和五三年五月二〇日、
本件担保のうちC名義の極度額合計八〇〇〇万円の根抵当権について仮登記の抹消登記手続がされ、同年九月二日、本件担保のうち太陽神戸銀行を権利者とする極度額三〇〇〇万円の根抵当権についてAの経営する株式会社ケンツに対する移転登記手続がされると同時に抹消登記手続がされ、同月六日、右根抵当権に基づく競売申立登記の抹消登記手続もされた。
(六)しかし、<地名略>の土地の処分先は見つからず、他方、右土地を担保に原告名義で借入れを起こすこともできないでいたところ、昭和五三年一〇月三一日、原告は、Aの指示により、Aの経営する協和企興株式会社名義で原告の所有地を担保に三井銀行下井草支店から一億円を借り入れ、利息を差し引いた残額の九七七六万六八三九円を原告名義で預金した上、昭和五四年四月二〇日、その払戻しを受ける権限をAに委任する旨の委任状を作成し、そのころAは右委任状に基づいて右金額の支払いを受けた。
(七)昭和五四年八月一日、原告は、取引先の常盤建設株式会社から一億〇五〇〇万円を借り入れて右(六)の借入金を返済したが、常盤建設が右の貸付金に充てる資金を他から借り入れた際、<地名略>の土地をその担保に供した。
(八)昭和五五年六月二八日、原告は、右(七)の常盤建設からの借入金を返済するため、青葉町の土地について本件譲渡をした。
2保証契約の締結の有無
(一)原告は、昭和五二年四月一一日にAとの間で、海紅苑の債務について原告が保証ないし物上保証をする旨の合意を結んだ旨主張する。
(二)ところで、右(一)の主張事実に関わる証拠として、原告本人尋問の結果中の、原告が海紅苑との間で本件担保に係る登記の抹消手続を右1の(三)のとおり延期する合意をしたことを、昭和五二年四月一一日にAに報告したところ、その際又はその後にAが原告に対して、海紅苑が期限までに本件担保に係る登記の抹消手続をできなかつたときには、原告が海紅苑に代わつて債務を弁済することになる旨を述べたとする部分がある。
しかし、右のAの発言に関する原告の供述は曖昧な部分がある上、右供述に係るAの発言内容が保証ないし物上保証の合意の趣旨であるものと断定することも困難であり、結局、右供述だけによつては、原告とAとの間に海紅苑がAに負担する債務につき保証又は物上保証の合意が存在したと認めることはできず、まして、海紅苑が太陽神戸銀行に負担する債務につき、原告が保証又は物上保証をしたと認め難いことは明らかである。
(三)また、原告がAから海紅苑の債務を支払うよう求められて、結局約一億円を支払つたこと、これと相前後し、海紅苑を債務者として<地名略>の土地に設定されていた太陽神戸銀行を権利者とする根抵当権設定登記及び実質上Aを権利者とする根抵当権設定仮登記が抹消されたことは、右1に認定したとおりであり、右事実によれば、実質的に原告の右出損によつて、<地名略>の土地を担保とする海紅苑の太陽神戸銀行及びAに対する債務が弁済されたこと及びこのうち太陽神戸銀行に対する弁済はAが事実上原告に代わり、最終的には原告の出損を原資として行つたものであることを推認することができないわけではない。
しかし、<地名略>の土地の売主である海紅苑が結局本件担保に係る登記の抹消手続をすることができなかつたことも右1に認定したとおりであり、原告が既に一億三〇〇〇万円を投資した本件土地を確保するためには、保証ないし物上保証の合意の有無にかかわらず、債権者であるA及び太陽神戸銀行に対して、海紅苑に代わり弁済せざるを得ない立場にあつたこと、また、原告が、<地名略>の土地を斡旋した当のAとの間で、海紅苑の債務を保証し、または改めて物上保証する合理的な理由も見出だし難いことを考慮すると、実質的に原告の出損によつて、<地名略>の土地を担保とする海紅苑の太陽神戸銀行及びAに対する債務が弁済されたからといつて、原告とA及び太陽神戸銀行との間に保証ないし物上保証の合意が存在するものとまでは認めることができない。
(四)さらに、前掲甲第一〇号証によれば、原告がBとの間で、本件担保に係る登記の抹消手続の延期を合意した際、併せて、原告と海紅苑との間でいつたん本件担保を抹消したものとみなして原告が新たに<地名略>の土地を物上保証に供するという内容の合意をしていることが認められる。
しかし、前掲乙第二六号証によれば、右合意に本件担保に係る担保権者が全く関与していないことが認められるのであるから、右の合意をもつて、原告とA及び太陽神戸銀行との間の物上保証の合意とすることができないことも明らかである。
(五)右(二)ないし(四)のほかに、原告の右(一)の主張事実を含め原告が海紅苑の債務について保証ないし物上保証をしたことを認めるに足りる証拠はない。
3本件特例の第三取得者への適用の有無
右1の認定事実によれば、原告は、本件担保が設定された<地名略>の土地の第三取得者であるところ、右2の(三)のとおり、本件担保の被担保債権は、実質的に原告が出損をしてこれを代位弁済したものというべきである。
しかして、原告は、第三取得者が代位弁済した場合にも物上保証人に類似するものとして本件特例の適用を認めるべきであると主張している。
しかし、本件特例は、課税の特例を定めた規定としてその適用は厳格であることが要求されるところ、物上保証人であれば、債権者に対して保証債務を負うものではないが、自己所有の財産を他人の債務の担保として債権者に供するため債権者と当該担保権の設定契約を締結するものであり、債権者との契約により保証債務を負う保証人と実質的には同様の立場にあるといい得るから、物上保証人が代位弁済する場合には実質的には保証債務の履行と変わらないものとして本件特例の適用を認めることができるけれども、第三取得者の場合は債権者の関与を要せずに売主との合意のみで当該物件を取得するものである上、取得の際に抵当権等の負担を織り込んで代金等を決定することが可能であり、また、そのようにするのが通常であるから、保証人ないし物上保証人とは立場を異にするというべきであり(なお、民法五〇一条が代位者相互間の関係について保証人及び物上保証人を同列に置き、第三取得者をこれらの劣位に置いていることも右解釈の参考となる。)、第三取得者には本件特例の適用はないというべきである。
三本案前の主張について
本件譲渡に本件特例の適用はないことは右二に判示したとおりであるから、本件譲渡に本件特例の適用があることを前提とした本件修正申告の錯誤無効の主張は理由がない。
そうすると、本件修正申告における納付すべき税額についての原告の納税義務は確定していることになるから、本件訴えのうち、本件更正中の納付すべき税額が本件修正申告における申告額である二三三九万九九〇〇円を超えない部分の取消しを求める部分は、不適法というべきである。
四本案について
本件訴えのうち、右三に述べた部分を除くその余の部分について判断する。
1本件更正の適法性
原告の昭和五五年分所得税に係る総所得金額、分離課税の長期譲渡所得に係る総収入金額、取得費の額、特別控除額及び分離課税の短期譲渡所得(損失)の金額並びに総所得金額に対する算出税額及び源泉所得税額及び予定納税額の合計額については、右一のとおり当事者間に争いがなく、分離課税の長期譲渡所得に係る本件譲渡に本件特例の適用はないことは右二に判示したとおりであるところ、以上をもとに租税特別措置法三一条一項(昭和五七年法律八号による改正前のもの。)、同法施行令二〇条一項(昭和五七年政令七二号による改正前のもの。)に従つて原告の昭和五五年分の所得税に係る納付すべき税額を算出すると、被告主張のとおり三七四一万五一〇〇円となり、本件更正に係る納付すべき税額はこれと同額であるから適法である。
2第一次決定の適法性
原告の昭和五五年分の所得税についての納付すべき税額は右1に述べたとおり三七四一万五一〇〇円であるところ、本件修正申告では計算を誤つてこれを二三三九万九九〇〇円として申告されていることは当事者間に争いがない。
したがつて、、原告は、一四〇一万五〇〇〇円(国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満切捨て)を過少に申告したことになるところ、右の一四〇一万五〇〇〇円に同法六五条一項により一〇〇分の五を乗じて過少申告加算税の税額を算出すると、七〇万〇七〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満切捨て)となるから、これと同額を賦課した第一次決定は適法である。
3第二次決定の適法性
原告の確定申告における納付すべき税額が一二万六三〇〇円であること及び修正申告における納付すべき税額が二三三九万九九〇〇円であることは、右一のとおり当事者間に争いがないから、原告は二三二七万三〇〇〇円(国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満切捨て)を過少に申告したことになるところ、右の二三二七万三〇〇〇円に同法六五条一項により一〇〇分の五を乗じて過少申告加算税の税額を算出すると、一一六万三六〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満切拾て)となるから、これと同額を賦課した第二次決定は適法である。
五結論
以上によれば、本件訴えのうち、本件更正中の納付すべき税額が本件修正申告における申告額である二三三九万九九〇〇円を超えない部分の取消しを求める部分は不適法であるから却下することとし、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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